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イラスト.ジャスミン アンフルラージュとは

アンフルラージュ(enfleurage)とは、中世から20世紀の初頭まで、南フランスのグラースという町で行われていた、エッセンシャルオイル(精油)の抽出方法の一つで、冷浸法や油脂吸着法とも呼ばれています。グラースは、中世ごろから香水生産が非常に盛んで、シャネルの5番もこの町で作られました。精油とは、花や葉、根や樹脂などから抽出できる天然の芳香物質で、香り成分の凝縮物のようなもの。抽出するには、水蒸気蒸留法や圧搾法が一般的ですが、熱や圧力に対して不安定な植物には、アンフルラージュが有効でした。
具体的には、牛脂(ヘッド)や豚脂(ラード)が香り分子を吸着する性質を利用した方法です。木枠にはめ込んだガラス板(シャッシー)に、無臭にした油脂を塗り、その上に香りのよい花を並べて、揮発した香り成分を集めていきます。数十回花を取り替えて、香りが飽和状態になった油脂はポマード(香脂)と呼ばれ、そのまま髪につけたり、練り香水として使われることもありました。精油にするには、さらにアルコールと攪拌して香りを移してから、アルコールを蒸発させるという、非常に時間と手間のかかる作業が必要になります。他の抽出方法に比べ、高品質で繊細な香りの精油が採れるため、かつてのグラースでは大規模に行われていましたが、製造コストがかさむことと、溶剤抽出法という新たな技術が発達したことで、現在では商業的に実用されなくなりました。

 

 

イラスト.デフルラージュ アンフルラージュの歴史

アンフルラージュの発展にはいくつかの要因があります。1533年にアンリ2世の元へ嫁いだカトリーヌ・メディチは、洗練されたイタリアのルネサンス文化を、フランス国内に数多く持ち込みました。その1つが香水。御輿入れに同伴した調香師レナード・ビアンコを通して、当時まだ風呂に入る習慣がなく、庭で用を足すような、粗野な暮らしをしていたパリの人々へ香水を紹介します。ビアンコには初の香水店をオープンさせ、自身も独特の臭いがする革手袋に、香料で香りづけをして舞踏会へ行き、のちに香り手袋を大流行させました。次第に香水はフランス人の生活にも自然と取り入れられ、ルイ14世に至っては、1日に数本のオーデコロンを使っていたといわれるほど、香水とフランス宮廷文化は切り離せない関係となっていきました。
また、香水の原料となる香料植物を栽培するのに適した土地として選ばれたのが、気候の温暖なグラースでした。グラースはもともと革なめし産業で栄えていたことから、大量の皮革が発している臭いを消すために、製造工程で不要になる大量の脂肪が利用できるために、皮革職人が香料製造を行うようになっていきました。覆い隠すための臭いの存在こそが、急速な香水技術の革新に影響していたことがよくわかります。

 

 

イラスト.アンフルラージュ パルファムクリュとは

今の日本では、ポマードというと男性用の整髪料が連想されますが、もともとの語源は、花の香りがいっぱいにまで充満した天然の油脂を表していました。このポマード、一部の成分のみを集めた精油とは異なり、香水や精油では再現できない複雑な花の香りを、そのまま移し取ることができます。
パルファムクリュ(Parfum Cru)はフランス語の造語で、パルファムは「香水」、クリュは「自然のまま」「未加工」を意味します。自分で選んだ花、育てた植物の香りを、余すことなく吸収し、自分の手でポマードを作ることができる、パルファムクリュシリーズ。香りを集めるという体験を通して、植物の特性を知る楽しさ、香りによって記憶や思い出がよみがえる喜び、目に見えないものを形にする面白さが実感できるかもしれません。油脂の主成分はシアバターで、香料や保存料は一切使用していません。香りの強さを調整したり、お好みでブレンドもできるのが特徴。花農家やクリエイターとも連携しながら、植物と人をつなぐツールとして、活躍の場を拡げています。

 <パルファムクリュの使用方法>

 

 

イラスト.花畑 パルファムクリュに向くお花

    ・バラ・・・ダブル・ディライト、アンブリッジ・ローズ、フェア・ビアンカ、美咲、かおりかざり、わたぼうし、
          イヴ・ピアッチェ、ウィンダーメア、ローズ・ポンパドゥールなど <香りのバラ紹介>

    ・その他・・・クチナシ、ハゴロモジャスミン、チュベローズ、キンモクセイ、水仙、白梅、コモンラベンダー、
           スタージャスミン、ろう梅、カサブランカ、熱帯スイレン、大山蓮華、柑橘系の花など

        ※ 香りは、季節や時間帯などによっても異なります。強く感じるぐらいの方がつきやすいです。

 

 

イラスト.脳内メカニズム 香りと記憶

嗅覚というのは、五感の中でも特に、記憶と深い関係があります。それは、各神経からの情報伝達経路に違いがあるためです。大脳辺縁系とは、本能行動(食欲・性欲・睡眠欲など)や記憶、情動(喜怒哀楽、快・不快など)を司る原始的な脳ですが、嗅覚だけは、神経から得た情報をダイレクトに大脳辺縁系へ送るため、感情や本能をより大きくより速く揺さぶると考えられてきました。そのため、香りを嗅ぐことで記憶が想起されたり、感情に直結したりという現象が起きるとされています。
また、生命活動を維持するための本能は、理性や経験を必要とせず、人が生まれた時から他の動物と同じく身に備わっていますが、そのうちの生存欲求においても、嗅覚は重要な役割を果たしてきました。外敵が近付いてきた時にいち早く察知し、寝ている間も身を守れるよう、現代人の嗅覚も24時間働いています。一日のうちでも割合を大きく占める睡眠時間にどのような香りをかぐかで、生活のあり方は変わるかもしれません。


     ・ 視覚・聴覚・味覚・触覚 → 大脳新皮質 → 大脳辺縁系(海馬)→ 記憶

     ・ 嗅覚 → 大脳辺縁系(海馬)→ 記憶 → 大脳新皮質

 

 

イラスト.紅茶に浸したマドレーヌ プルースト効果.現象

フランスの文豪マルセル・プルーストの名にちなみ、「プルースト効果(現象)」として知られている。この現象は、プルーストの代表作「失われた時を求めて」の文中において、紅茶に浸したプチット・マドレーヌを主人公が口にした瞬間、その香りをきっかけとして、長年の間すっかり忘れ去っていた幼年時代の記憶が、リアルに蘇って頭の中を駆け抜ける、という描写が元になっている。小説ではなくとも、誰しもがこれに近い経験をしたことがあるのではなかろうか。香りに喚起される記憶や皮膚感覚のメカニズムに対する、科学的・心理的見地からの解明は、現在も続いている。

機械的に、一さじの紅茶、私がマドレーヌの一きれをやわらかく溶かしておいた紅茶を、唇にもって いった。しかし、お菓子のかけらもまじった一口の紅茶が、口蓋にふれた瞬間に、私は身ぶるいした、 私のなかに起こっている異常なことに気がついて。すばらしい快感が私を襲ったのであった、孤立した、原因のわからない快感である。(井上究一郎訳 『失われた時を求めて〜スワン家のほうへ』)

 


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