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旧喰丸小学校

福島県、奥会津。紅葉が日本一美しい鉄道、只見線に沿って流れる只見川を目印に、上流に向かって奥へと進んだ山間部に位置する、昭和村。映画「ハーメルン」の舞台となった旧喰丸(くいまる)小学校も、人口1500人ほどのこの小さな村に残っています。カスミ草の栽培も盛んで、市町村別の栽培面積では、なんと日本一。静かな底力を秘めたこの地に、昔ながらの製法で植物から繊維をとり、糸を作って色を染め、自然布を織り上げる人たちがいます。その植物を刈り取る際の香りがとてもいいので、一度嗅ぎに来られませんか?とお誘いを受けたのは、夏の盛りのころ。


からむしの葉

その植物の名は、からむし。以前から「カラムシ」や「チョマ」と、話には聞いていたものの、日本語なのかわからないような言葉の響きだけが頭に残り、実際にどんな姿をしているのか、正直なところ、あまりよくわかっていませんでした。けれども、香りがきっかけで知ることとなったからむしの世界は、それはそれは奥深いものだったのです。


大正時代の喰丸地区(写真提供:からむし工芸博物館)

かつて昭和村ではどの家でも、家族の着る服の布地は女性たちが織っていました。日常の暮らしで使う野良着や風呂敷は、主に麻布。それに加えて、新潟の小千谷縮(おぢやちぢみ)や越後上布(えちごじょうふ)の原料となる上質の繊維、からむしの原麻(げんま)生産を行っていたことから、からむしの栽培、糸作り、布織りに使われるあらゆる道具が、生活の中に溶け込んでいました。


発芽したからむし

からむしは、大麻(たいま)、亜麻(あま)と並んで、麻の一種とされていて、別名を苧麻(ちょま)といいます。日本全国で雑草として繁茂していますが、古くは縄文時代、縄や布にしていた記録が残り、その他、紙や漁網にも加工されてきました。江戸時代以前までは、大麻と同じく、庶民の衣服として利用されていたようです。藤や楮(こうぞ)のようなアク抜きの手間がかからず、しなやかで丈夫な上に、天然繊維の中ではもっとも吸湿性が高いため、湿気の多い日本の気候に適した衣服を作ることができます。特に昭和村のからむしは、より長く上質な繊維がとれるため、付加価値がつくようになり、600年以上にわたって、産地としての営みが受け継がれてきました。


男性のしごと・刈り取り

麻とは、植物の茎や葉からとれる繊維の総称ですが、大麻がクワ科の一年草であるのに対し、からむしはイラクサ科の多年草で、葉はシソのような形をしています。多年草であるということは、毎年春になれば新たな芽が出てきます。二十四節気において、万物が一定の大きさに成長し始める小満(しょうまん:5月21日)の頃、田植えの終わった昭和村では、畑に火を入れる「焼畑(やきはた)」を行います。


冷たい清水に浸す

これは、思い思いに出てきた新芽の成長を揃えるため、虫や病気を防ぐため、焼いた灰を肥料とするために、伝統的に続けられてきた農法です。化学肥料を使うと根が傷んで良質の繊維がとれなくなるため、代々にわたって肥料はすべて、有機物(古くは人間の糞尿を薄めたもの)が人の手によって撒かれてきました。そうして大切に育てられたからむしは、7月の土用頃からお盆にかけて、一本一本丁寧に刈り取られ、長さや枝の出方によって分けられて、冷たい清水につけ込み、その日のうちに皮をはぎ、苧引き(おひき)を行います。


渡辺夫妻の苧引きと皮はぎ

苧引きとは、茎からはがされた皮をさらに金具でしごき、白い繊維を取り出す作業。からむしをめぐる一連の作業には、風習として男女の役割分担が残り、刈り取りと皮はぎは男性、苧引きから糸作り、布織りは女性の仕事となります。高齢化が進む昭和村では、ご主人が先に亡くなられたお宅などで、女性一人がそのすべてを担う状況にもなっていますが、苧引きは特に、昭和村特有の工程です。全盛期には、若い女性は炊事をせず、上げ膳据え膳でひたすら苧引きを続けていたほどだったとか。


村民の思いの結晶「きら」

他の地域(沖縄や韓国)でも、皮をはぐ作業は同じですが、苧引き具(おひきご)と盤を用いて青汁を抜き、「きら」と呼ばれる真珠のような銀白色の光沢を生み出すのは、昭和村だけ。引きたての原麻は手触りもやわらかく、美しい「きら」を生み出すのは、村人たちの誇りでもあります。というのも、「きら」の良し悪しは、苧引きの技術はもちろんのこと、栽培から含めたすべての作業が関わり、一年をかけて誰も手を抜けません。光り輝く「きら」は、皆が手を取り合って愛情を注いだ、かけがえのない証なのです。諸説あるにせよ、昭和村だけがこの植物を「からむし」と呼び続けるのは、自分の子どものような、家族のような愛着のある存在だからこそ、苧麻や会津苧(あいづそ)といった他人行儀な名前では表現できなかったことも理由の一つなのではないでしょうか。


100匁の原麻、引き板と苧引き具


こうして原麻は100匁(もんめ:1匁=約3.75g)ごとに束ねられ、特に良質のものは新潟へと旅立ちます。残ったからむしは、さらに村の中で、人の指で撚られて糸になり、人の身体で織られて布になります。綿や繭の「糸紡ぎ(つむぎ)」に対し、麻では「糸績み(うみ)」といいますが、今ではあまり耳にしなくなっています。人の手で績まれたからむしの糸は、機械紡績のそれより強く、伸縮性があります。いざり機(ばた)と呼ばれる、人体そのものが支えになった織り機で織られた布が、機械織りに比べて、私たちの身体に馴染みやすいことも、村の中で人から人へと語り継がれてきた生活の知恵なのです。


身体に馴染む抱っこひも(からむし)

これらすべての技術を今でも目にできるのは奇跡的ですが、徐々に失われつつある現状を危惧し、立ち上がったのが「からむし布(ふ)」のお二人、渡辺悦子さんと舟木由貴子さんでした。お二人は、昭和村が20年前から続けている「からむし織姫体験生」制度を利用し、村外から移住した織姫です。すっかりこの村とからむしにハマってしまったお二人は、めでたく村内の男性と結婚され、今は立派に村民であり、母でもあります。そんな暮らしの中、渡辺夫妻は見事に男女の役割分担をこなし、昭和村の期待の星となっています。舟木さんは、糸績みや布織りも続けながら、村外へのスポークスマンとして、私たちを昭和村へ招き入れてくれました。


おこわを蒸し上げるすき布(大麻)

「からむし布」という名前には、高級織物である「からむし織」の役割とともに、より生活に親しむ素材として、多くの人にからむしや手績み・手織りの技術を知ってもらいたいというお二人の思いが込められています。雪深い東北の山間地の冬は長い長いものですが、人々はその時間を利用できる、冬の楽しみをもっていました。自給自足が衣服や民具に至るまで、1次産業から6次産業までが、この地には古くから根付いていました。春の火入れの気配、夏の刈り取りの香り、秋の糸績みの手触り、冬の機織りの音色。つい数か月前まで知らなかった奥会津・昭和村は、一年を通して訪れたい、いつ思い出しても気持ちが穏やかになる、私にとっても心の故郷のような存在になりました。そんなあたたかな文化を残していくために、まずは自分たちが使いたいものをと、からむし布では、抱っこひもやのれん、蒸し料理に使う「すき布(ふ)」などが制作されています。


豆腐屋ののれん(からむし)

衣と植物のあいだには、思いがけないほどたくさんのストーリーがあります。多くが過去の遺物となる中、いまなお二つの関係を大事に守り続ける昭和村。このたび、「からむし布」の舟木由貴子さんをアトリエ・ミショーにお招きし、昭和村の暮らしとからむしにまつわるお話会を開催します。そして、みなさんにも日常生活で使ってもらえたらという思いを込めて、お二人からは、からむしの糸と布をご提供いただきました。関西から奥会津までは、移動するにも半日がかり。交通が発達し、どこにでもすぐ行けそうな気がする現代ですが、山の奥深くに位置する昭和村へは、容易に訪ねられるものではありません。急な日程ではありますが、実際にたくさんのからむし製品を見せていただきながら、いろいろとお話を伺っていきたいと思います。


そば殼染めのからむし布

ところで、肝心のからむしの香りは?夏のおぼろげな記憶を頼りに、これから再現してみます。仕上がりは、当日のお楽しみに。


福島県奥会津・昭和村 からむし布 舟木由貴子さんのお話会

講座日

2013 /12 /15 (日)

時 間

10. 00 - 12. 30

定 員

14名
* 多数お申し込みいただき、ありがとうございます。
  追加募集分を含め、定員に達しました。
  キャンセル待ちのみ受付中です。

参加費

4,500 ¥ (からむしの手績み糸・手織り小布、お茶と軽食込み)

 お土産:からむしの香りのスプレー
 この日のために
 刈りたてのからむしの香りを再現してみます
 みなさんにも 少しだけおすそ分け

内 容

1部 レクチャー「昭和村が教えてくれること」
  (スライドを交えて)
2部 レクチャー「布を手で作るということ」
  (からむし製品を見ながら)
3部 舟木さんを囲みながらティータイム
  (質疑応答)

講 師

舟木 由貴子 (ふなき ゆきこ)
1975年、茨城県生まれ。神戸芸術工科大学でテキスタイルを専攻し、自動車企業でカラーデザインに携わる。2002年、織姫体験生として昭和村に訪れて以来、からむしのもつ力に魅了される。以降、栽培や糸績み、布織りの技術を学びつつ、からむしと昭和村が育んできた文化を守る「からむし布」の活動がライフワークとなる。村内での結婚を経て、現在、子供2人と妊娠7カ月のお母さん。


からむし布 (からむしふ:渡辺悦子+舟木由貴子)
「からむし織姫体験生」出身の二人組ユニット。昭和村へ移住したのち、毎年開催される「からむし市」の運営を手伝ううち、村に残された素朴な営みを守りたい思いが募り、2011年に「からむし布」として活動開始。昭和村で代々受け継がれてきた昔ながらの暮らしぶりを伝えるため、村人が糸を績み、地機(じばた)で織る”からむし布”を用いた生活用品の制作を行っている。からむしを知らなかった人も、より身近で愛着のある存在に感じてもらえるよう、ともに子育てをしながら日々奮闘中。

会 場


アトリエミショー
 京都市北区紫野上門前町66


市バス「東高縄町」停より 西へ徒歩6分
市バス「大徳寺前」停より 北へ徒歩10分 → バス系統・時刻表
市営地下鉄烏丸線北大路駅1番出口より 西へ徒歩15分
※ 駐車場はございません。お車の方は、近隣のコインパーキングをご利用下さい。

ご予約・お問合せ

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